正月の朝、町の広場には巨大な風船が飾られていた。
風船には「今年の願いを込めて触れるべし」と書かれた看板が立っている。
子どもたちが次々と風船に触れては
「ゲームがもっと上手くなりますように!」
「お菓子がたくさん食べられますように!」と願いを叫ぶ。
大人たちも、「商売繁盛!」や「健康第一!」と真剣な表情で祈っていた。
だが、そこに一人、見るからに疲れ切った青年が現れた。
彼の名前は中村翔太。
去年の仕事納めから新年まで、職場でトラブルが相次ぎ、
休みどころか寝る暇もなかったという。
「こんな風船で願い事なんて、子どもじみてるな」とぼやきながらも、
ふらふらと風船の前に立つと、何かに引き寄せられるようにそっと手を伸ばした。
彼の手が風船に触れた瞬間、不思議なことが起こった。
風船の中から光が漏れ出し、広場全体がきらめく。
突然、翔太の目の前に一通の手紙が宙に浮かび上がった。
手紙にはこう書かれていた。
「新年おめでとうございます。今年はあなたに素晴らしい幸運をお届けします。
ただし、条件があります。
それは『人を助けるたび、幸運が増える』ということです。
信じるかどうかは、あなた次第。」
翔太は「なんだこれ」と首をかしげたが、
妙に現実感のある出来事に半信半疑ながらも広場を後にした。
それから数日後。彼は偶然道端で困っている老人を助けたり、
迷子の子どもを親のもとに送り届けたりする場面に出くわした。
そのたびに、小さなラッキーが続いた。
交通渋滞に巻き込まれるはずが抜け道を見つけたり、仕事のミスが奇跡的に防げたり。
やがて翔太は「もしかして、あの手紙の通り?」と考えるようになり、
自分から積極的に人助けをするようになった。
不思議なことに、仕事もプライベートも驚くほど順調になっていく。
年末、翔太はふと広場を訪れた。
あの風船はなくなっていたが、彼の心には新たな願いが生まれていた。
「来年も人を助けて、この幸運を分け合いたい」。
翔太の新しい年は、
広場の風船のように軽やかで、幸せに満ちたものになりそうだった。
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