ある日、SNS上で「大手メディアの敗北」がトレンド入りした。
ニュースサイトやテレビ局の関係者たちは慌てふためき、
原因を探ろうと必死だった。
だが、トレンドをクリックしても、まとまった情報はない。
あるのは匿名のアカウントたちが放つ嘲笑や怒りの声、
そして「マスゴミ」という言葉が踊るツイートの数々だった。

「情報が足りない。これでは何が起きているのかわからないぞ」
一流テレビ局の会議室でディレクターが叫ぶ。
画面にはSNSのフィードが映し出されているが、内容は断片的だ。
「何かやらかしたか?」
「いや、最近の報道はむしろ慎重だったはずだ」
「トレンド入りするような事件があったか?」
「あったとしても、我々のニュースで一切触れてない。なら、どこで…」
会議が混乱する中、若手記者が震えながら口を開いた。
「もしかして…これ、我々が報道してないこと自体が原因なんじゃないですか?」
全員が沈黙した。
その直後、一つのツイートが目に留まった。
『大手メディアが取り上げないことが、最大のニュースだ。』
「報道しない自由が報道されている…?」
年配のプロデューサーが頭を抱える。その瞬間、場に重苦しい笑いが漏れた。
しかし、SNSの流れは止まらない。あるツイートが決定打を放つ。
『もう情報の独占はできない。真実はみんなのものだ。 #マスゴミの終わり』
誰が最初にそれを呟いたのかは誰も知らない。
ただ、その言葉は火種となり、SNSを炎上させた。
もはや大手メディアの意見や訂正など、誰も求めていないのだ。
「…どうする?このままだと、我々の存在意義が問われるぞ」
沈黙が続いた後、一人が静かに口を開いた。
「真実を語るのではなく、
真実を運ぶだけの存在に成り下がったかもしれませんね。
我々はもう負けたのです」
その言葉に全員が納得するしかなかった。
そして数日後、ニュース番組の冒頭でキャスターが語った。
「今日は特別番組として、
SNSで話題となった『大手メディアの敗北』についてお送りします」
皮肉にもその放送は視聴率トップを記録し、SNSでもトレンド入りした。
だが、今度はこうだった。
『大手メディアの敗北、再び』
–完–


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