カフェ「コスモス」は、銀河系の端っこにぽつんと浮かぶ小さな星にあった。
ここでは、どの種族も、どの時代から来た者も、時間や空間を超えて集まり、
たわいのない話を楽しむことができた。
ただ一つ、ここには季節がない。
永遠に同じ温度、同じ光、同じ静けさが広がる場所だ。
今日も、あるいは何千年ぶりかに、私はこのカフェを訪れていた。
ドアを開けると、懐かしい香りが鼻をくすぐる。
コーヒー豆の香ばしさと、どこかで煮詰められたスパイスの匂い。
それらは季節を知らせる花の香りではなく、
宇宙を旅する冒険者たちの記憶を呼び覚ます香りだった。
カウンターに立つのは、常連たちからは「マスター」と呼ばれる、
見た目は人間だが、地球の誰にも似ていない男だった。
彼は私を見るなり、「お帰りなさい」と言った。ここは、友達が待っている場所だ。
「今日は何をお楽しみに?」マスターが尋ねる。
「いつもの、星雲のラテにしてください」と答えると、
彼は微笑みながらポットを手に取った。
ラテは、星々の色をそのまま反映したような、深く美しい青と紫でできていた。
飲むと、口の中で小さな星が弾けるような感覚が広がる。
カフェの隅には、地球から来たという作家が座っていた。
彼はノートパソコンに向かって何かを書きつづけている。
私は隣に座り、「何を書いているんですか?」と尋ねた。
「宇宙の物語。どこにも属さない、季節も訪れない場所での、人間ドラマをね」
と彼は答えた。
そこには、愛や友情、裏切り、そして赦しが描かれていた。
季節があるからこそ生まれると思っていた感情や事件が、
季節のないここでも起こるのだと気づかされた。
時間が流れ、客は入れ替わりつつも、カフェは変わらない。
テーブルには、異なる文明から来たゲームが置かれ、
互いにルールを教え合う光景が見られた。
あちこちで笑い声や議論の声が聞こえる。
ここでは、時間は止まっているのかもしれない。
最後にマスターが私に一杯のコーヒーを無料でくれた。
「次の訪れまでに、これを飲んで、また新しい話を持ってきてくれ」と言って。
私はカフェを後にする。
外に出ても、季節は変わらない。
だが、カフェ「コスモス」の中で、私は確かに何かを感じ、何かを学んだ。
友情、愛、そして人間の本質。それは季節に関係なく存在する何かだ。
次の訪れがいつになるかは分からない。
だが、私には確信がある。
このカフェは、いつもここにあるだろうと。
そして、そこで出会う人たちは、私に新たな物語を与えてくれるだろう。
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