ある小さな村に、時間を止める力を持つ男が住んでいました。
彼の名前は時太郎。
村人たちは時太郎の力を尊敬し、必要なときはいつも彼に助けを求めました。
ある日、村の祭りが近づき、皆が楽しみにしていました。
しかし、その祭りの準備が追いつかず、時間が足りないという声があがりました。
村人たちは時太郎に頼み、
祭りの準備が終わるまでの時間を少しだけ止めてもらうことにしました。
時太郎はうなずき、深呼吸と共に手を広げました。
すると、空が静まり、鳥たちのさえずりが止まり、風さえも止まりました。
村人たちは急いで準備を進め、笑顔で祭りを迎えることができました。
しかし、時太郎は一抹の不安を感じていました。
「時間を止めることの真の意味を、私たちは理解しているだろうか?」
と自問しました。
時間が止まっている間、世界は変わらない。
だが、その代わりに失われるものもあったのです。
祭りが終わった後、時太郎は村人たちに話しました。
「時間を止めることは、私たちの未来を止めることでもあります。
今日を楽しむために、明日を犠牲にするべきではありません。」
村人たちはその言葉に深く頷き、
時太郎の力をもう二度と頼ることはありませんでした。
代わりに、彼らは一つ一つの瞬間を大切にし、時間と共に生きることを学びました。
そして、時太郎は村を去る決心をしました。
自分がもたらす力の恐ろしさを理解し、
どこか遠くで、静かに生きる道を選んだのです。
彼の去った後も、村は時間と共に、ゆっくりと、しかし確実に成長していきました。
終わり
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