繁忙期の夕方、駅前の飲食店「ゆったり亭」には家族連れが次々と入店していた。
ある一組の家族――母親と幼い男の子――もそのうちの一組だった。
母親がスマホを見つめる間、男の子は店内を走り回っていた。
店員が数回「危ないのでお座りください」と声をかけたが、
母親は「うちの子は元気なんです」と笑うだけで取り合わなかった。
しばらくすると、男の子はレジ横に設置された大きな陶器の花瓶にぶつかり、
花瓶が床に落ちて粉々に砕けた。
母親はすぐに店員を呼びつけ、こう言い放った。
「店で起きたことは、100%店の責任ですよね?」
困惑する店員に、母親は続けた。
「子供が走り回るのは普通のこと。
そんな危険な場所に高価そうなものを置いておく方が悪いんです。」
母親はさらに、「どう責任を取るつもりですか?」と声を荒げ始めた。
周囲の客も興味を引かれたように、その様子を見つめている。
最終的に店長が謝罪し、
「今回は修理費用はこちらで負担させていただきます」と頭を下げた。
母親は満足げにうなずき、子供を連れて店を後にした。
その夜、「ゆったり亭」の公式ツイッターアカウントに次のような投稿がされた。
本日、店内でお子様が備品を破損された件につきまして、
責任を持って対応させていただきました。
ただ、店舗としても安全管理に努めておりますが、
お子様の安全のためにも親御様のご協力をお願い申し上げます。
この投稿は瞬く間に拡散され、
コメント欄には
「親の責任はどこ行った?」
「子供がやれば何でも店のせいになるのか?」といった声が相次いだ。
さらに、その場に居合わせたという客が匿名で詳細をツイートし、
母親の振る舞いがさらに批判を浴びる結果となった。
翌日、母親のアカウントが突如こうつぶやいた。
昨日の件で、思慮に欠けた行動をしてしまいました。
お店の皆様、そして不快な思いをされた方々に深くお詫び申し上げます。
しかし、その謝罪文の最後にはこう添えられていた。
でも、やっぱりあんな高価そうな花瓶、
壊れやすいものを置いておくのはどうかと思います。
この一文により、さらに炎上が加速することとなった。
数日後、
「ゆったり亭」はこの一連の出来事を忘れるかのように、
通常通りの営業を続けていた。
しかし、常連客の一人が店長にこう囁いた。
「店の責任って言葉も、たまには重いですね。でも……面白いからまた来ますよ!」
店長は苦笑しながら返事をした。
「これがSNS時代の風物詩なんでしょうかね。」
エピローグ
皮肉にも、この騒動をきっかけに「ゆったり亭」のツイッターアカウントは
フォロワーを大幅に増やし、売上も少し伸びたという。
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